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*結末ネタバレなしです
ファニー・プライスという少女が、お金持ちの親戚であるバートラム家(マンスフィールド・パーク)に預けられることになった。ファニーの実家は子沢山で貧しく、母親は「家名に泥を塗る」結婚をし、父親は元船乗りで大酒飲みである。ファニーの伯母のバートラム夫人は玉の輿に乗った准男爵夫人で、上品だがぐうたらで無気力な女性だった。もう一人の伯母であるお節介なノリス夫人は、事あるごとにファニーを見下していじめていた。
バートラム家の2人のお嬢様であるマライアとジュリアは美人姉妹だが、虚栄心が強く道徳心に欠けていて軽薄。長男のトムは金遣いの荒い放蕩息子。次男のエドマンドだけはやや堅物だが真面目なしっかり者で、牧師になることが目標である。エドマンドは、内気で大人しいファニーにも優しく親切であり、感謝と憧れを感じていたファニーは成長するにつれひそかに恋心を抱くようになる。やがてバートラム家へ引き取られてから8年が経ち、ファニーは18歳になった。
准男爵サー・トマスは農園経営立て直しのため、西インド諸島のアンティグア島に向かう。サー・トマスが不在の中、マンスフィールドにロンドンから新たな顔ぶれが加わる。牧師館に住むグラント夫人と父親違いの弟と妹である、ヘンリー・クロフォードとメアリー・クロフォードだ。どちらも都会的で明るく魅力的な人物で、すぐにみんなの人気者になった。
メアリーのほうは初め、長男で跡継ぎのトムに興味を示すが、相手が自分に興味がないと分かり、次第に真面目なエドマンドのほうに惹かれていく。だがロンドンでの贅沢な生活と、結婚相手に華々しい社会的地位を求めるメアリーにとって、牧師と結婚して田舎で地味な隠遁生活を送ることは彼女の性分には合わないことだった。メアリーの美貌と溌溂とした性格にエドマンドは好意を抱いていたが、彼女の道徳観のやや欠如した言動にショックを受けることもしばしばだった。
マライアは、ノリス夫人の肝いりで、大金持ちだが愚鈍なラッシュワース氏という人物と婚約していた。だが女たらしのヘンリーはマライアとジュリアの気持ちを弄んで誘惑し、恋の戯れを楽しむ。姉妹はヘンリーをめぐって敵対心を抱くようになり、だんだんと不仲になっていく。
ある日、トムの悪友イェーツ氏が素人芝居をすることを提案する。エドマンドとファニーだけは、家長の不在に乗じて芝居をするのは不謹慎ではないか、また婚約中という微妙な立場のマライアの評判に関わるのではないかと懸念する。だが他のみんなは乗り気で、『恋人たちの誓い』という家庭内で演じるには不適切な芝居を上演することにした。
稽古を通じてヘンリーとマライアはさらに親密になっていく。婚約者のそんな様子を見てラッシュワース氏は嫉妬する。リハーサルの日、グラント夫人が急遽参加できなくなったことで、ファニーも芝居に参加するよう迫られ、とうとう説得に屈して引き受けざるをえなくなったその瞬間、なんと突然サー・トマスが帰宅し、一同は恐怖に震え上がった。
サー・トマスは当然素人芝居に不快感を示し、すぐにやめさせた。ヘンリーからプロポーズされなかったことで、マライアは彼にただ弄ばれていただけと気付き、ラッシュワース氏と結婚する決意を固める。式を挙げたラッシュワース夫妻は、ジュリアも連れてマンスフィールド・パークを離れ、ブライトンへ新婚旅行に向かった。
牧師館の人々とバートラム家の交流はますます親密になり、エドマンドは何度もメアリーにプロポーズしようとするが、彼女の気持ちに確信が持てず、根本的な考え方の違いもあってなかなか決心がつかない。彼はファニーに自分の気持ちを打ち明け、ファニーは動揺する。
バートラム姉妹が去って、ヘンリーは退屈しのぎに今度はファニーにアタックし始める。最初はファニーの心に「ちっちゃな穴」を空けてみたいという下心からだったが、どんなアピールにもなびかないファニーに、ヘンリーは次第に本気で恋に落ちていることに気付く。
クリスマス目前の12月、ファニーの最愛の兄であり海軍士官候補生のウィリアム・プライスが、マンスフィールド・パークを休暇で訪れることになった。サー・トマスは二人のために舞踏会を開催することにした。そこでもファニーに対するヘンリーの好意はあからさまだったので、周囲の人も徐々に勘付くようになる。舞踏会の後、ヘンリーは海軍提督である叔父のコネを利用して、ウィリアムが海軍で昇進するのを助けてやった。これをきっかけに恩を着せる形でヘンリーはファニーにプロポーズをしたが、ファニーはこれは何かの冗談だ、従姉のマライアたちと同じように弄ばれているだけだと思い、断固として断る。自分に絶対的な自信があるヘンリーはそれでも諦めることはなかった。
サー・トマスは、ファニーがこんなにも有利な結婚の申し出を断ったことに怒りと失望を覚えた。そこで、裕福で上品な生活のありがたみを分からせるために、ファニーをしばらくポーツマスの実家に帰らせることにした。その一方、聖職叙任式を終えて正式に牧師になったエドマンドは、彼の不在により態度を和らげたメアリーと急接近していく。メアリーはその後、友人宅を訪問するためロンドンへ向かう。
ファニーは8年ぶりにポーツマスへと里帰りするが、礼節と思いやりに欠け貧しさで心に余裕のない家族から温かく迎えられることはなかった。ファニーは無秩序で乱雑で下品な実家に失望し、恥ずかしいとさえ思う。そんな実家までわざわざ訪れてくれたヘンリーの紳士的な振る舞いに、ファニーはほんの少し心を動かされる。ファニーのもとには、兄のプロポーズを受けるよう勧めるメアリーの手紙が届いていた。
その頃、トム・バートラムが泥酔中に落馬した時の怪我がきっかけでひどい病気を患ってしまい、生死の境をさまよう。マンスフィールド・パークの人々は悲しみに暮れてうろたえるばかり。メアリーは、長男のトムが万一亡くなればエドマンドが相続人になれるのではないかと打算を働かせる。ファニーも早く屋敷に戻りたいと願っているが、そんな中、別の方面から衝撃のニュースが舞い込んできて…