*結末ネタバレなしです
舞台は1800年代前後の摂政時代、イギリス南部の田舎。
ビングリー氏という青年資産家(年収4000ポンド1)が、ネザーフィールド・パーク屋敷を借りるという噂が村中を駆け巡った。近隣の人々はその話題で持ちきりである。
ベネット家(年収2000ポンド)には5人の未婚の娘たちがいて、母親のベネット夫人は娘たちを早く結婚させようとやや暴走ぎみ。ベネット家の長女ジェインは純粋で心優しく姉妹一の美人であり、次女エリザベスは美しさでは二番目だが、才気煥発で溌溂とした性格だ。残りの三人の妹たちはみな愚かで、特に末っ子リディアは母親に似て軽薄である。その後、父親のベネット氏が挨拶に訪れて両家の交流が始まる。ビングリー氏はとても感じが良くハンサムな好青年だった。
舞踏会が開かれ、そこにはビングリー氏と彼の姉妹(ビングリー嬢とハースト夫人)や友人のダーシー氏も出席していた。ダーシー氏は年収1万ポンドで大資産家の大地主であるものの、たいへん高慢で不愉快な人物だった。彼はエリザベスと踊ることを拒否したうえに、彼女の容姿について「まあまあだな。だが、ぼくを魅了するほど美人ではない」と見下した発言をする。それを耳にしたエリザベスは、初対面からダーシー氏に悪印象を抱く。一方のビングリー氏はジェインの美しさに胸を打たれ、おたがい急速に惹かれ合っているようだった。
上流階級気取りのビングリー姉妹からは、エリザベスは淑女らしくないと軽蔑される。またビングリー姉妹は、ベネット家の母方の親戚に商人や事務弁護士がいることを影で嘲笑していた(ビングリー家も父親が商人の成り上がりだったが、姉妹はなるべくその事実を思い出さないようにしていた)。
ダーシー氏はエリザベスと一緒に過ごしたり会話したりするうちに、彼女の生き生きとした魅力や知性にだんだんと惹かれていく。ダーシー氏との結婚を目論むビングリー嬢もそのようすに目ざとく気が付き、エリザベスに嫉妬せずにはいられなかった。
ある日、牧師で親戚のコリンズ氏という人物がベネット家を滞在に訪れた。コリンズ氏は卑屈にこびへつらうのに尊大でもったいぶった愚かな俗物だった。息子のいないベネット氏の死後は、コリンズ氏がロングボーンの屋敷と土地をすべて相続する予定になっている(限嗣相続)。コリンズ氏の訪問の目的は、ベネット家の娘たちのうちの一人と結婚して、将来の経済的不安から一家を解放してやることだった。そして数日後、コリンズ氏はさっそくエリザベスに恩着せがましくプロポーズしたが、エリザベスは断固として拒否する。
しかしそれから何日も経たないうちに、現実主義者で結婚にロマンスを求めない友人のシャーロットがコリンズ氏の求婚を受け入れたと聞き、エリザベスは愕然とする。女性が困窮せず生きていくためにはやむをえないとはいえ、愛のない打算的な結婚をした親友に失望したのだ。
その頃、近くで国民軍の軍隊が駐屯することになった。その中に連隊一の美男子であるウィカムという魅力的な青年士官がいた。エリザベス含むベネット家の娘たちは彼と親しく交際するようになる。驚いたことに、ウィカム氏はダーシー氏と同郷の幼なじみだった。彼は、ダーシー氏から経済的に酷い仕打ちを受けた過去をエリザベスに打ち明けた。エリザベスはダーシー氏に対してさらに偏見を抱き、ますます嫌うようになる。
冬になると、ビングリー家が突如ネザーフィールドを発ちロンドンへと去った。何週間経っても帰って来ないため、「もしやビングリー氏はジェインへの恋心が冷めてしまったのではないか」と近隣の人たちは口々に噂する。だがエリザベスは、ビングリー氏は性悪な姉妹たちからロンドンに引き止められているのではないかと疑っていた。
やがて、新婚の友人シャーロットのたっての願いでエリザベスはケント州にあるコリンズ家を訪問するが、そこで偶然ダーシー氏と再会する。コリンズ氏の後援者であるキャサリン・ド・バーグ令夫人は、なんとダーシー氏の叔母だったのだ。キャサリン令夫人は貴族出身の大金持ちであり、高慢で尊大な女性だった。エリザベスは、同じく叔母の屋敷を訪問していたダーシー氏のいとこのフィッツウィリアム大佐と親しくなる。そして彼からの話で、ダーシー氏が「最近ある友人が軽率な結婚をするのを阻止してやった」と自慢していたと聞かされる。姉ジェインとビングリー氏の仲を引き裂いたのはダーシー氏にちがいないと確信したエリザベスは、さらに彼への憤懣と嫌悪感を募らせる。
そうとは知らないダーシー氏はついにエリザベスにプロポーズをする。しかし彼はエリザベスへの愛情について語るより、二人の家柄の違い(特にベネット家の母方に地位の低い親戚がいること)やみずからの自尊心について語るほうが多かった。ダーシー氏の居丈高な物言いに怒りを爆発させたエリザベスは、にべもなく彼のプロポーズを断る。また、姉ジェインの恋を邪魔した件やウィカムへの仕打ちについてもきつくなじった。大資産家で社会的地位もある自分のプロポーズを断る女性がいるとは、まさか夢にも思っていなかったダーシー氏は、とてつもない衝撃を受けた。
翌日、エリザベスはダーシー氏から一通の釈明の手紙を受け取る。そこには驚くべき事実が書かれていて……